美術館における鑑賞体験は作品のある展示室だけではない。美術館建築から芸術をとりまく環境は始まっている。今回は東京文化会館を訪ねる。

東京文化会館は、建築家・前川國男(1905-1986)の代表作として知られる本格的な音楽ホールだ。隣には前川氏の師匠である、ル・コルビュジエが設計した国立西洋美術館がある。
前川氏はこの国立西洋美術館の建築にも関わり、師匠ル・コルビュジエが構想した複合オーディオリアムの完成を目指して、この東京文化会館を完成させた。



本館は、大ホール、小ホール、会議室、音楽資料室などを構え、それぞれの機能がブロック状の外観に表れている。師ル・コルビュジエの影響を感じさせるとともに多様な要素を統合させている。


大ホールの舞台は高さと奥行きがあるため、コンサートはもちろん、可動式の舞台装置により大掛かりなバレエやオペラの公演に使われている。2,303席の大きなホールを響かせるのは雲形のブナ材。これは彫刻家の向井良吉の作品だ。これによって“奇跡的”とも言われる音響の良さを実現している。

小ホールは、室内楽やリサイタルなどが楽しめる649席の会場。特徴的な音響反射板と、コンクリートの壁に付いている音響パーツは、彫刻家の流政之の作品。

4階の音楽資料室は、数少ない音楽専門の図書館として1961年に開設され、過去の公演プログラムやクラシック音楽などの資料を無料で閲覧・視聴することができる。楽譜を見ながらレコードやCDを視聴してみるのも楽しそうだ。
ル・コルビュジエの当初の構想を実現した前川國男による師弟の物語。その特別な空間へ足を運んでみてほしい。
