業界構造と企業戦略

今回はマイケル・ポーター氏が提唱した「5つの競争要因(ファイブフォース)」というマーケティング戦略について学んでいきます。これは企業がその業界内でどのような競争環境にあるのかを分析するためのフレームワークです。業界内の競争要因を明確にし、その結果として収益にどのような圧力がかかっているかを理解することができます。

ファイブフォースの目的は、自社外のマクロ環境を分析することです。ここでいうマクロ環境とは、競合、顧客、供給業者など、企業に直接影響を与える業界内の環境を指します。これらの要因が収益にどのように圧力をかけているのかを理解し、業界全体の収益構造を明らかにします。

ファイブフォースの要素は次の5つです。

  1. 新規参入業者の脅威
  2. 代替品の脅威
  3. 売り手の交渉力
  4. 買い手の交渉力
  5. 競合相手との競争

これらの圧力が強ければ強いほど、業界の収益性は低下するため、まずは業界内の競争状況を知ることが、収益構造を理解することにつながります。順番に見ていきましょう。

新規参入業者の脅威

新規参入業者の脅威を減らすためには、参入障壁を高く設定することが効果的です。これにはブランド力、規模の大きさ、スイッチングコスト(顧客が他の企業に乗り換える際のコスト)などがあります。

航空業界を例に考えてみましょう。航空会社として業界に新規参入するには機材やインフラへの大規模な投資、規制への対応、運行路線の設定などの高い参入障壁があります。こうした場合は参入業者の脅威は低いと整理することができます。

代替品の脅威

代替品とは既存の製品やサービスの代わりとなるものです。これらはスイッチングコストや製品の特長、ニーズの充足度などが関数になります。

例えば飛行機の代替品としては新幹線や自動車、船などがありますが、時間のロスが大きいため完全な代替品とはなりません。それが飛行機や航空業界が自動車産業などに対する優位性でもあります。しかしオンライン会議ツールの普及によって、出張という目的で考えた際の新しい代替品が台頭してきていることについては新たな脅威と見なすことができるでしょう。

売り手の交渉力

売り手とは主に企業に原材料やサービスを提供する業者を指します。売り手の交渉力とは、商品の希少性や差別化、業界内での影響力によって左右されます。

航空業界では、機体や部品、燃料などの供給元との取引において安全性などから選択肢が限られているため、これらの売り手の交渉力は強いといえます。

買い手の交渉力

買い手とは顧客や卸売業者などを指し、彼らの交渉力は購買力やスイッチングコストの低さ、差別化の程度に影響されます。

航空業界では、外資系航空会社やLCC(格安航空会社)といった自社以外の選択肢を選ぶことができるため、買い手の交渉力は一定程度存在します。しかし路線や日時の制限があるため、必ずしも買い手の交渉力が強いわけではありません。

既存企業間の競争

既存企業間の競争が激しいかどうかを分析するには、競合企業数、ブランド力、資金力などを考慮します。

航空業界ではさまざまな会社が競合していますが、いわゆるFSC(フルサービスキャリア)とLCC(ローコストキャリア)の対比をはじめ、就航機材や路線、便数などにも特徴や違いがあるため、競争環境は強いですが非常に激しいとは言えないでしょう。

では、ここまで見てきた航空業界におけるファイブフォースの分析結果を整理してみましょう。

  • 新規参入業者の脅威は低い。
  • 代替品の脅威は高い。
  • 売り手の交渉力は強い。
  • 買い手の交渉力は中程度。
  • 既存企業間の競争の脅威は中程度。

以上から、最も収益に対して脅威となるのは代替品と売り手の交渉力であると分かりました。ここから考えられるアクションプランとしては、たとえば売り手との良好な関係を築いて原材料の高騰を抑えることや、代替品への対策としてビジネスパーソンにインセンティブを提供するなどの施策が思いつきそうです。

このように5つの競争要因を分析することで、業界の競争環境が明らかになり、収益への影響を理解することができるようになります。

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