美術館における鑑賞体験は作品のある展示室だけではない。美術館建築から芸術をとりまく環境は始まっている。今回は京都文化博物館を訪ねる。

現在、京都文化博物館として使われているこの赤レンガ造りの建物は、日本銀行京都支店として竣工した。設計を手がけたのは、近代日本建築の巨匠・辰野金吾とその弟子・長野宇平治。師弟の協働により、この洋風建築は日本近代建築史に名を刻む存在となった。

辰野金吾は、日本銀行本店や東京駅、さらには各地方支店の設計も手がけたことで知られ、日本全国に統一された都市景観と近代国家の象徴を築き上げた。彼が生涯に設計を志したのは、日本銀行、東京駅、国会議事堂の三つ。国会議事堂は実現には至らなかったが、残る二つを完成させている。

一方、長野宇平治は「和唱洋髄(わしょうようずい)」という和の美意識を内包した西洋建築を追求したはじめての建築家である。その意匠には古典主義の枠にとどまらない大胆な造形も見られ、後年の評価も高い。日本建築士会の初代会長を務め、建築士法の成立など制度面でも功績を残している。
1914年竣工の本館はネオ・ルネサンス様式を基調とし、左右対称のファサード、石造装飾、高天井など、明治・大正期の近代建築の特徴を色濃く残している。

建物の内部に目を向けると、営業室には高天井と大開口部が設けられ、自然光がふんだんに差し込む設計となっている。特筆すべきは「ドーマー窓」の存在である。屋根面に突き出したこの小窓は、室内上部から柔らかな自然光を取り入れ、まるで間接照明のような均質な明るさを空間にもたらす。

用途を変えながらも建築としての本質を損なうことなく活用され続けているこの建物は、時代の美意識と技術の結晶だ。
